第1章

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「僕は本気で愛してしまったのだ。」 「僕は男で彼も男だがそれは今、どうでもいいと思っている。」 「問題なのは彼に対する想いが日に日に大きくなり過ぎて、もう僕の中では抑え難くなってきていること。」 「それが辛くて、僕は今悩んでいる。」 「この気持ちを彼に伝えるべきか。」 「もしそうなったら、彼はどんな反応するだろうか。」 「気持ちの悪いヤツだと、嫌われるだろうか。」 「はたまた意外にもすんなり受け入れてくれるかも。」 「仕事で浅黒く陽に焼けた彼の肌。」 「月曜日だってのに、だらしなく伸びた無精ヒゲ。」 「スーツの上からでも解る、少しだけ出はじめた下っ腹。」 「その全てが、僕にとってはすごく愛おしい。」 「毎日僕は、彼を見かけると」 『あの人と僕が唇と合わせる時、きっと僕の方が小さいから背伸びをしなきゃいけないな。』 「なぞと妄想して時折フッと我にかえり、赤面して俯たりしている。」 「全てはあの本の言葉通りになった。」 「毎日とても苦しく辛く、そして楽しい。」 「色々な感情に苛まれ悩まされ振り回されている。」 「そしてその全ては、あの人への気持ちに帰結する。」 「僕は今、確かに僕がこの世界に存在すると認識している。」 「しかし同時に、もう一歩前へ踏み出すべきなのか迷っている。」 「彼にこの想いを伝えたい。」 「しかしここにきて、どうしても勇気が出ない。」 「なにかきっかけが欲しい。」 「だから僕はまた、運命に委ねてみることにした。」
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