―そこに棲まうモノ―

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『うん。なんだか急に高熱が出ちゃって、今日は付き添いして下さいって言うのよ』 「そうなんだ……」 『まあ、生きるの死ぬのって問題じゃ無いから心配しないで。それより、一人で大丈夫?』 いや、大丈夫じゃないけど……。 いい年して、留守番が嫌だなんて言えないよね。 新しい部屋での、最初の日。 本音では一人で過ごすのは嫌だったが、場合が場合だ。 「大丈夫だよ、お母さん。もう高校生なんだから、心配しないで。うん。明日、転校手続きの書類を持って行けばいいんだよね?」 『学校の場所は、書類の中に地図があるからそれを見て……って、大丈夫かしら。あんた方向音痴だから』 「大丈夫だって! 心配しないでって! 自分の娘を信用してよー」 痛いところを突かれて頬を膨らませると、母がクスクス笑いを漏らした。 『じゃあ、頼むわね。何かあったら電話してね』 「うん。わかった」 引っ越し第一日目。 こうして私は、新居での一人の夜を過ごすことになった。 心に、一抹の不安を抱えて――。
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