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引っ越し第一日目。
日曜日の社宅の昼下がり。
じりじりとアスファルトを焼く真夏の太陽が、情け容赦なく照り付ける中、
父を乗せた救急車が見えなくなるまでその姿を目で追っていた私は、ふと、周りの状況がおかしいことに気がついた。
数人の主婦らしきグループが、私の方をチラチラ見ながらひそひそ話をしている。
部屋からは出て来ないが、窓を開けて盗み見ている者もいる。
その全員が、私と目が会うと、気まずげに視線を外して行ってしまう。
――何だか、避けられてる?
「あの、坂田さんですよね? 坂田主任の所の確か、美鈴さん?」
不意に背後から名前を呼ばれ、私はドキリと固まった。
まだ若そうな男性の声だ。
振り向くと、背の高い痩せぎすの青年が二人立っていた。
一人は二十代後半くらい。
もう一人は、私と同じくらいか、ちょっと上くらいに見える。
二人とも黒い短髪で、一重のスッとした切れ長の目をしていて良く似ていた。
一目で血縁者と分かる風貌だ。
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