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「学年も同じだし、二クラスしか無いから、もしかしたら同じクラスになるかもね。明日は一緒に学校に行くといいよ。朝迎えに寄らせるから」
石崎兄弟は、このアパートの上の階の405号室に、母親と三人で住んでいるのだと言う。
「あ、はい。方向音痴なんで助かります」
「美鈴ちゃん、方向音痴なんだ?」
「はい、かなり。地図通りに目的地に行けた試しがないんです」
思わず笑顔がヒクヒクと引きつる。
どうも私は『帰巣本能』とか『方向感覚』というものを、母のお腹の中に全部置いてきてしまったらしく、地図通りに曲がっているはずなのに、気がつくと同じ所をぐるぐる回っていたりとか日常茶飯事なのだ。
だから、新しい学校に迷わず辿り着けるはずがないと、胸を張って言えてしまう。
「それは、筋金入りだね」
「本当、自分でもそう思います」
お父さんのケガで始まった引っ越し第一日目だったけど、そんなに悪い日でもなかったかな。
和やかな空気に包まれながら、心の中でそう思った時だった。
パシン!
天井で大きな音がした。
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