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三人が一斉に、視線を集中させる。
音がしたのはキッチンの天井。
私たちは、シンクのちょうど真上辺り、木目の天井板を凝視した。
――何? 今の音。
「……家鳴りかな。このアパートもかなり古いからね、あちこちガタが来ているし」
政志さんが、天井を見詰めながら目を細める。
その声音は何処か『腑に落ちないと』言うニュアンスが含まれている気がした。
彼自身もあの音の正体が掴めない、そんな感じだ。
「家鳴り、ですか?」
「ああ、多分。でも……」
「でも?」
「いや、何でもないよ。そんなに気にしなくても大丈夫。いくら古くても、建物が崩れるなんてことはないからね」
――それはちょっと、笑えないかも。
私は、年季の入ったアパートの外観を思い浮かべて、思わず笑顔が引きつってしまった。
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