1人が本棚に入れています
本棚に追加
battle1. 【殺し屋気取りの転校生】
それは高校に入学して1ヶ月が過ぎた頃のお話。例に漏れず私は遅刻しないギリギリの時間、いつもの通学路を歩いていた。
昔からいつもそう。怒られないギリギリのラインに常にいた。熱中出来るものを見つけられなかった。勉強も運動も普通よりも出来る。それだけで世の中は生きやすかった。わざわざ自分から苦労を買わなくても…そう思っていた。
だから、少女との出会いは神様がくれたチャンスなのだろう。
例え出会いが通学路を歩いていたらいきなり前を歩いていた見ず知らずの少女に投げ飛ばされそうになった、なんていうものだとしても。…反射的によけたけどな?
「うぉっ!?」
しかし、私もただ少し運動が出来るというだけの武術も何も習っていない一般人。よけきれる、なんてことはなくしりもちをついた。
まぁ投げ飛ばされるよりかは数倍ましだろう。
「あ!?あぁー!すみません!つい反射的に!」
少女は私の存在に気付き、とても驚いたような顔で謝った。
そして驚愕的な発言をする。
「でも、普通背後をとられたら投げ飛ばしません?」
「…普通?」
いやいや、そんなことはないだろう、と反論しようとして私の目に腕時計が飛び込んできた。
「やっば!遅刻!」
そもそも普段遅刻しないギリギリの時間で通学路を歩いているのだ。こんなイレギュラーが起これば時間が危うくなるのは当たり前。
そう思って私は体制をすぐ立て直した。もちろん走るためだ。遅刻はダメだろ!
少女にも注意を促す。
「ねぇ!さっきのは気にしてないから貴方も早く行きなよ!ここからじゃ走らないと遅刻だよ!」
「え、えぇ…!」
少女の返答なんて聞く前に私は走り出した。陸上部のエースを抜くくらいの持久力と足の早さには自信がある。恐らくチャイムがなる前には教室に入れるだろう。
そう考えていた私は残された少女のつぶやきを聞き取れなかった。
「あら、本が?」
最初のコメントを投稿しよう!