イケメンパニック

10/37
前へ
/37ページ
次へ
あまりにしつこい春一に、さすがの鈴音も辟易したのか、やがてコロンと春一に背中を向けると、 「もう春さんヤダァ」 仔猫の唸り声みたいな、子どもがグズるような甘えた調子で訴えた。 「……」 ヤダ、とまで言われてしまった。 ちょっとだけ、春一の繊細な心に傷がつく。 でもまあ、 「ふう」 小さくため息をついて、鈴音から身を起こした。 自分が粘着気質なことには自覚がある。 この旅行の前におせっかいな次男から、 「あんましつこくすると、鈴音に嫌われるぜ」 余計な忠告まで受けている。 「仕方ない、か」 声にして、自分に言い聞かせながら、眠る鈴音の華奢な肩から目をそらした。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加