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あまりにしつこい春一に、さすがの鈴音も辟易したのか、やがてコロンと春一に背中を向けると、
「もう春さんヤダァ」
仔猫の唸り声みたいな、子どもがグズるような甘えた調子で訴えた。
「……」
ヤダ、とまで言われてしまった。
ちょっとだけ、春一の繊細な心に傷がつく。
でもまあ、
「ふう」
小さくため息をついて、鈴音から身を起こした。
自分が粘着気質なことには自覚がある。
この旅行の前におせっかいな次男から、
「あんましつこくすると、鈴音に嫌われるぜ」
余計な忠告まで受けている。
「仕方ない、か」
声にして、自分に言い聞かせながら、眠る鈴音の華奢な肩から目をそらした。
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