イケメンパニック

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一方、美穂は、もうただひたすら心の中で、 「お願い、せめて後1メートル、いえ50センチでいいから、私から離れて」 と願っている。 化粧を落としただけで化粧水もつけていない肌は、きっと毛穴が開きっぱなし。 いつもはファンデーションで隠しているソバカスだって丸見えだ。 そんな顔を、わずか10センチの距離から覗き込まれるだなんて、女同士でもまっぴらごめんなのに――、 それをこんなイケメンから! それでも、この女心をまったく解そうとしない男は、 「きっと助かるから、大丈夫、安心して」 なんて優しい言葉を、美穂にかけ続けてくれる。 その低くて良く通る声音がまた、美穂の心臓をジタバタと暴れさせる原因だというのに、 やっぱり男は、これっぽっちも気がついていない。 「こんな無自覚イケメン、誰が野放しにしたのよっ」 つい逆ギレしてしまいながら、 「さっき私、焼酎を飲んだわ。鍋はキムチ鍋だった。口臭どうなのっ、臭くないの?」 落ち込んでしまうことばかり、頭に浮かぶ。
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