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美穂にとっては永遠かとも思えるほどの長い時間だったが、実際はそうたいした時ではなく、
――ヒュゥイーン――
とくに誰にも予告なくエレベーターは動いて、次の階で止まった。
ドアも開く。
開いたドアの向こうには、ホテルマンと仲居のふたりが待っていてくれた。
「お客さま、大丈夫ですか?」
問うホテルマンに対してイケメンが、
「彼女の気分が悪いんです。助けてください」
必死に助けを求めてくれるなんて、なかなかいい気分ではないか。
美穂は、ようやく助かったという安心感と、ちょっとした優越感から、
「……ほう」
全身から力を抜いた。
それがどうやら気を失ったように見えたらしく、ホテルマンは、
「お連れさまをこちらにお願いします。お部屋を用意しますから」
言って、男を先導するように、廊下に向かって手のひらを差す。
仲居はホテルマンに言われて、先に部屋の鍵を開けに走って行ってしまった。
美穂は急いで、
「あ、大丈夫です」
と目を開けようとしたのだが、その前に、
「ちょっと、ごめんね」
男が美穂の耳元で囁いて、いきなり美穂を抱き上げた。
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