イケメンパニック

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朝、鈴音は春一の腕の中で目を覚ます。 眠った時は別々だったのに、いつの間にか逞しい腕の中に閉じ込められるように抱きしめられている。 鈴音が起きたことに気づいたのか、春一もすぐに目を開けると、 「おはよ」 微笑んでくれた。 布団から腕を出して、鈴音の髪を梳くように撫でてくれる。 気持ちのいい指の感触を味わいながら、鈴音はぼぉーっと寝起きの頭で、間近にある春一の顔を見上げる。 本当に、いつ見ても綺麗な顔だ。 こんなに近くにあると心拍数があがって、寝起きの頭も一気に起きてくれそうな……。 いや、逆に見惚れてぼーっとしちゃうか? なんてことを考えていると、春一は、 「どうかした?」 と首を傾げて聞いてくる。 鈴音は慌てて、 「ん、何でもない。大丈夫よ」 返事をすると、春一は、甘やかな瞳をますます甘く滲ませながら笑う。 つい、赤面してしまった。 すると春一は 「大丈夫なら鈴音」 頬にかかる髪を指で避けながら囁く。 「鈴音ねえ、もう一回、しよう」 「!」  ――朝、である。 夕べ早寝したせいか、まだ早朝という時間だが、間違いなく『朝』だ。 なのに春一は、 「ねえ鈴音。もう一回」 などと言いながら、鈴音の首元に顔を埋めてくる。 「……」 家にいる時はあんなにしっかりして見えるのに、なんだってこんなにデレデレなのだ? 「ええと、春さん」 戸惑ってしまって抵抗しようとしたのだが、言い訳を許さない春一の行為は、あっという間に鈴音を溶かしていった。
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