イケメンパニック

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というわけで、部屋を出たのはチェックアウトぎりぎりの時間になった。 「鈴音、忘れ物はない?」 ドアを手で開け放ってくれながら、春一はまだ部屋の中でぐずぐずしている鈴音に声をかけてくれる。 「えっと大丈夫です。多分」 情けない返事だが、春一が朝っぱらからあんなことをしなければ、鈴音だってもっと余裕をもって、帰る支度ができたはずだ。 今朝の原因は春一にもある。 慌てたら、ついカーペットの引っかかりに足を取られてしまう。 春一はすかさず、腕を掴んで支えてくれながら、 「鈴音、気を付けて」 「……」 全部、春一が悪い。 春一が恰好よすぎて、気を抜けば、つい見惚れてしまう鈴音がいる。 ふたりでフロントまで歩いてくると、鈴音は驚いた。 フロントのロビーは、まるでこれからイベントでも始まるように、人で溢れていたのだ。 ほとんどは制服を着た旅館の従業員だが、中には私服の女性客の姿もある。 「これ何?」 鈴音は聞いたが、春一も首を傾げて、 「さあ? これから芸能人でも来るんじゃないか」 と言った。
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