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ところが、ロビーに姿を現した春一を見るや否や、その集まっていた人々が、
「来生さま、おはようございます」
一斉に頭を下げる。
「!」
びっくり、した。
挨拶は別に特別なことではないが、こんなデパートの開店時みたいに丁寧に出迎えられると、一体なにごとが始まったのかと思ってしまう。
それともこれが、この旅館の習慣なのか?
従業員全員で、宿泊客を見送る、みたいな。
鈴音が考えていると、昨日、部屋に挨拶に来てくれた女将が、春一の前にしずしずと進み出てきた。
そして、
「来生さま」
と話しかけてくる。
「夕べはまことにご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした」
謝ってくれる。
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