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風呂場へ続くガラスのドアを、春一は鈴音を抱いたまま器用に開けて、一緒に湯船の中に身を沈めていった。
段差が怖いのか、鈴音は春一の首にギュッとしがみついてくる。
押し付けられた鈴音の柔らかい身体が、春一は心地いい。
ずっと春一に体の全部を預けていたのが、お湯の浮力を借りて、鈴音の身体がふわりと浮かぶ。
そうなってからやっと、鈴音は身体の強張りを解いて、
「うー、春さんヒドいです」
睨むような目で春一を見上げてきた。
そんな鈴音の顔に、春一はつい顔がにやけてしまう。
「まさか本当に、俺が鈴音を落っことすとでも?」
鈴音が睨んできても、可愛いだけでちっとも怖くない。
鈴音は、
「そりゃあ春さんを信じてはいますけどね。でも、怖かったですよ」
今度はすねて唇を尖らせる。
つい、そんな鈴音の額にキスしてしまった。
「俺がお前を落とすわけないだろ」
鈴音は、本当に可愛い。
ベッドの中の鈴音も、マジで春一の全部を奪ってしまいそうになるほど魅力的だが、怒ったり、すねたりする鈴音の顔は、ただもう可愛らしい。
どうやら春一は鈴音に夢中なだけのようだが、そこまでの自覚はまだ無くて、ただ、
『何だって、こんなに可愛いんだろう』
と頬が緩むのを止めることが出来ない。
ただの欲目というやつである。
それでいて、
『今度は何したら笑うかなぁ』
などと考えている。
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