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無色透明のお湯の中で、鈴音の白い肌がゆらゆらと揺れている。
距離を縮めれば、また鈴音に触れたくなる。
抱きしめたくなる。
ついさっきまでさんざに腕の中で鳴かせたはずなのに、ほんの少し離れていただけで、こんなにも欲しくなる。
鈴音を誰にも見せないよう閉じ込めて、抱きしめて、それから……
なんて、物騒なことを考えていると、
「春さんを見てるだけで、ちょっとのぼせてしまいそうです」
鈴音は困り果てた顔をした。
「全然、慣れません。春さんズルいです」
なんて言う。
「はぁ?」
意味はわからないが、鈴音がのぼせそうなのは本当だろう。
顔が真っ赤だ。
鈴音は、
「そういうわけなので先にあがります。春さんタオルはどこですか?」
聞かれても、タオルなんか風呂場へ持ってきていない。
鈴音を抱いていたお陰で、両腕がふさがっていたのだ。
それで、顎を傾けてドアの向こうの脱衣所を示してやると、
「じゃあ、えっと……。春さん、私あがりますから、あっち向いててくださいね」
と鈴音は言う。
「どうして?」
春一が聞いてやれば、
「だって、恥ずかしいじゃないですか!」
さらに顔を赤くした。
本当に、鈴音はただひたすらに可愛い。
思わず、
「なんで? 俺さっきもう、鈴音の全部を見たのに」
意地悪く言ってやれば、
「春さんのバカッ!」
鈴音は湯船の縁に手をかけて、春一に背中を向けてしまった。
……どうしよう。
にやけた顔が戻らない。
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