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「と、とにかくあがります。こっち見ないでくださいねっ」
鈴音の首の後ろから背中まで真っ赤になっているので、さすがに可哀想になってきて、春一は、
「はいはい」
と返事をしてやった。
春一の答えを待っている余裕もないと、鈴音はザバリと湯船から立ち上がる。
もちろん、春一が『見ない』なんて約束を守るわけもなく、にやにやしながら、脱衣所に歩いて行く鈴音の丸い尻を眺めていた。
気づかれたら怒るだろうなぁと思うのだが、どうにもやめられない。
やがて、脱衣所にたどり着いた鈴音は、そこのドアを開け中に入り、今度は閉めるために、改めてこちらを向くと、
――バチリ――
目が合う。
その瞬間、
「春さんなんか知りません!」
鈴音は悲鳴のような声をあげて、ドアをピシャリと閉めてしまった。
春一はもう、可笑しくって仕方がない。
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