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冬依の中学1年生
そぼ降る雨の中、コンビニを出たところの歩道の隅っこに、その人影は立っていた。
車道を勢いよく走り去る車のヘッドライトに、時折浮かびあがるのは人形のような白い顔。
色素の薄い瞳。
その瞳の周りを彩っているのは、遠目にもわかる長い睫毛。
ふっくらとした頬は寒さのせいで色を失っているが、とても柔らかそうだ。
こぢんまりと控えめだが形のいい鼻。
小さな口。
思わず目を見張ってしまうほど整っている。
傘がないせいで濡れそぼる髪が、まるでダイヤのベールをかぶったように、キラキラと輝いている。
雨の中、街路樹の下に立つ密やかな人影は、まるで妖精が具現化したみたいな、ファンタジーのような神秘的な美しさをたたえた美少女だ。
仁依が思わず、
「どうしたの?」
少女に声をかけてしまったのも、当たり前の話。
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