冬依の中学1年生

12/50
前へ
/50ページ
次へ
しかしふたりの男と戦っている間に、最初の男が頭を振りながら立ち上がってきた。 二度と油断はしないと、凶悪な勢いで殴り掛かってくる。 少女は少しだけハッとした表情を浮かべ、今度はくるりくるりと回転しながら、男の拳からすばやく身をかわす。 逃げながら、その辺りに置いてあるごみ箱やエアコンの室外機の上に、次々と飛び移った。 もちろん男も後に続こうとするのだが、体重のせいでごみ箱は引っくり返り、エアコンの室外機はベコリと音をたてて変形する。 電飾を灯していた看板が、ガチャンと割れて砕けた。 「このやろう、チョロチョロしやがって!」 激昂して飛びかかる男の前に出ていた膝下を、少女は軽い調子でパンと蹴り飛ばす。 その瞬間、 「ギャァーッ!」 男は、信じられないほどの大きな叫び声をあげた。 仁依が目を凝らせば、男の膝から下のパンツが血だらけだ。 さっき砕けた電飾の破片がパンツの裾に絡みついて、そこをまっすぐに、少女の蹴りが貫いたのだ。 男のスネは、ガラスが刺さって、大変な状態になっている。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加