117人が本棚に入れています
本棚に追加
少女は、
「ふう」
軽く息をつくと、仁依を振り返る。
「黒井さん、これ」
そしてさっき拾った仁依のヘアピンを返してくれようとするが、
「――」
仁依は無意識のうちに少女から距離を取っている。
別に殴られると思ったわけではないが、それでも、
「……ごめん、怯えさせちゃったね」
少女は今にも泣きそうな顔をして、深く首をうなだれた。
なんだか、仁依の方が悪いことをしている気がする。
だから、少し慌てて、
「あの、なんで私の名前を?」
少女の存在を物恐ろしく感じてしまったのは、それも理由のひとつだ。
仁依は、彼女に自己紹介をした覚えはない。
最初のコメントを投稿しよう!