冬依の中学1年生

14/50
前へ
/50ページ
次へ
少女は、 「ふう」 軽く息をつくと、仁依を振り返る。 「黒井さん、これ」 そしてさっき拾った仁依のヘアピンを返してくれようとするが、 「――」 仁依は無意識のうちに少女から距離を取っている。 別に殴られると思ったわけではないが、それでも、 「……ごめん、怯えさせちゃったね」 少女は今にも泣きそうな顔をして、深く首をうなだれた。 なんだか、仁依の方が悪いことをしている気がする。 だから、少し慌てて、 「あの、なんで私の名前を?」 少女の存在を物恐ろしく感じてしまったのは、それも理由のひとつだ。 仁依は、彼女に自己紹介をした覚えはない。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加