冬依の中学1年生

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仁依が、 「見てた? 私を?」 聞けば、 「うん」 少女はうなずいて、ポケットから黒い帽子とメガネを出してきた。 「ボクもこれで顔を隠してたからね。お姉さんもボクと同じだったから。 この人、名前、黒井さんっていうんだーとか、なんで顔隠してるんだろーとか、綺麗なのに勿体ないなーとか、いろいろ気になっちゃって」 「……」 仁依は言葉を失う。 「じゃああなた、ずっとあのコンビニの中にいたの?」 少女はまたコクリとうなずく。 「あのお兄さんたちが、商品をカバンに入れるのをこの目で確認したから、先に出て外で待ってたんだ」 仁依はコンビニの中の光景を、一生懸命思い出している。 一番目立っていたのは、やっぱりさっきの高校生たちだ。 仁依も注目していた。 その他には、入ってすぐ出て行ったOL。 トイレを借りていったサラリーマン。 パンの棚の前にいた女子高生。 それから……、 漫画を読んでいたおとなしそうな男の子。 「!」 思い出した。 男の子がかぶっていた黒い帽子は、今みせてもらったのと同じものだ。
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