冬依の中学1年生

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コンビニの中で立ち読みをしていたのは、地味な、普通の男の子だった。 オーラだってない。 なのに、帽子とメガネを外しただけで、こんな目を奪われるような美少女に変身するだなんて、まるで狐に化かされたような不思議な感覚。 それに、 「あなた、冬依くん。あなたまで顔を隠してたって、一体なんで?」 聞いてみると、冬依は、 「ん? 多分黒井さんと一緒だよ。黒井さんって万引きGメンでしょ」 さらりと言う。 「……え?」 正確には違うが、仁依がコンビニの中で顔を隠していた訳は、まさにその万引きの調査のためだ。 チェーン店の中でも特に万引き額が多いこの店の、正しい現状を把握するために仁依が遣わされた。 ただし冬依が言う、ちゃんとした万引きGメンではなくて、仁依の役割りは店の現状を把握し、万引きの原因を探ること。 店側に不具合や不注意があるなら、それを正すこと。 誰も好き好んで犯罪者を生み出そうとは思わない。 だから仁依がコンビニの制服姿で店内うろついたのは、そうやって見張る存在を印象づけて、万引き犯を抑制出来ればと思ったのだが、 ……残念なことに、効果はなかった。
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