冬依の中学1年生

28/50
前へ
/50ページ
次へ
坂田とベンチに並んで腰掛けた冬依は、 「ボクも先生の高校に受かるように、受験がんばります」 などと言って、坂田の興味を自分にむけようと、素直な好意の言葉を口にする。 そして坂田の、あの鼻の下の伸びよう。 相手は中学生だとわかっているはずなのに、不謹慎きわまりないスケベ顔。 第一坂田は、冬依が女の子だと、ちっとも疑いを持っていない。 当たり前だ。 仁依だってまんまと騙された。 そしてそれが、おそらく冬依の最大の作戦なのだ。 自分を女の子だと思わせて、坂田の気を惹く。 そしていよいよ危なくなったら、実は男の子だと告白して、坂田にショックを与える。 それで終わると思っている。 ……。 でも仁依は、たとえ冬依が男の子だとばらしても、坂田があっさり諦めるとは到底思えない。 店長に対してもストーカーにまでなった粘着気質だ。 坂田なんて男は、絶対に信じることは出来ない。 それに冬依くらい綺麗で可愛い容姿をしていたら、多分、男の子も女の子も関係ないだろう。 逆に倒錯した欲望は、余計に坂田を狂わせるかもしれない。 まだ中学生の冬依には、きっとそんなこと理解できないでいるのだ。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加