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坂田とベンチに並んで腰掛けた冬依は、
「ボクも先生の高校に受かるように、受験がんばります」
などと言って、坂田の興味を自分にむけようと、素直な好意の言葉を口にする。
そして坂田の、あの鼻の下の伸びよう。
相手は中学生だとわかっているはずなのに、不謹慎きわまりないスケベ顔。
第一坂田は、冬依が女の子だと、ちっとも疑いを持っていない。
当たり前だ。
仁依だってまんまと騙された。
そしてそれが、おそらく冬依の最大の作戦なのだ。
自分を女の子だと思わせて、坂田の気を惹く。
そしていよいよ危なくなったら、実は男の子だと告白して、坂田にショックを与える。
それで終わると思っている。
……。
でも仁依は、たとえ冬依が男の子だとばらしても、坂田があっさり諦めるとは到底思えない。
店長に対してもストーカーにまでなった粘着気質だ。
坂田なんて男は、絶対に信じることは出来ない。
それに冬依くらい綺麗で可愛い容姿をしていたら、多分、男の子も女の子も関係ないだろう。
逆に倒錯した欲望は、余計に坂田を狂わせるかもしれない。
まだ中学生の冬依には、きっとそんなこと理解できないでいるのだ。
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