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今回の結果は残念だったけれど、最初から、中学生の男の子には無理のある作戦だった。
初めからミッションの内容を聞いていれば、仁依だって、冬依にあんな無茶はさせなかった。
だから仁依は、大人の威厳を精一杯出して、冬依を叱る。
「冬依くん、これからはひとりであんな無茶しちゃダメだよ。あんなことしてあいつが今度は、冬依くんのストーカーになったらどうするつもりよ」
冬依の鼻先に指を突きつけたら、冬依はその指先を見つめて寄り目になった。
そんな表情もとても可愛らしい。
可愛いが、少し戸惑っているようにも見えたので、多分、仁依の言葉は冬依には理解できないのだろう。
だから、
「冬依くんぐらい可愛いかったらね、男の子も女の子も関係なくなっちゃうんだよ。坂田なんてやつ、きっと見境ないんだから」
言いにくいことを早口で教える。
「だからこれから、もしも何かされそうだったら、迷わずに周りの大人に相談するのよ、いい?」
至極もっともなお説教なはずなのに、冬依は、
「あははっ」
弾けるポップコーンみたいに笑った。
そしてひとしきり屈託なく笑い続けた後に、
「ありがとう。でもボクなら大丈夫。今日のことは帰ったら兄さんたちにすぐ相談して、今後黒井さんが心配するようなことになりそうなら、ちゃんと対処してもらうから」
そういえば冬依は、高校見学に一緒に出掛けるお兄さんがいると言っていた。
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