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少しムッとした顔でもするかなと思ったが、意外にも冬依は、
「黒井さんは優しいね」
ふわりと笑う。
「――」
どうしよう、今日一番の笑顔だ。
やっぱり赤面してしまう仁依に、冬依はその整った顔を近づけてくる。
「たとえばさ――」
「ん?」
「もしもあいつにキスされてもさ」
冬依はますます顔を近づけてくる。
「代わりに黒井さんのキスでボクのこと慰めてくれるなら、ボク、そっちの方が良かったな」
仁依の唇の直前、触れるギリギリのところで、
「黒井さんにキスしてもらえるなら、ボク、あいつとするぐらい全然よかった」
「!」
仁依は慌ててバッと腰を引く。
反射で自分の唇を腕で隠す。
……大丈夫、触れてない。
不純異性交遊じゃない、強制わいせつじゃない。
いやこの場合、どっちがどっちに襲われそうになったのだ?
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