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果たして冬依がどう出るか、と仁依がはらはらしていると、
「……ごめんなさい、春兄」
なんと!
冬依は素直に謝った。
そして本気で痛かったのだ。
やっと立ち上がってきた冬依は、頭を撫でながら涙目になっている。
それに、
「え、お兄さん?」
冬依は確かにそう呼んでいた。
ここまで来て、やっと仁依の存在に目を向けてくれたイケメンは、
「こんばんは」
これまた目が潰れそうなくらい眩しい笑顔で、仁依に挨拶をしてくれる。
これが冬依のお兄さん!
「こ、こんばんは……」
仁依は両手を身体の前で振りながら挨拶を返しつつも、なんとなく後ずさってしまう。
冬依と並んで立っても、その美しさに一歩も引けを取らない、めちゃくちゃイケメンのお兄さん。
ただそこにいるだけで、こちらを圧倒する半端ない存在感。
別に大声を張り上げたわけでも、怒りの表情を浮かべたわけでもないのに、素直に謝る冬依に、仁依ははてしなく納得。
この彼には、けして逆らってはいけない。
そして冬依の言う、『頼りになる大人のお兄さん』とは、きっと彼のことだ。
冬依をたった一発のゲンコツで黙らせる、有無を言わせぬその迫力。
そして、
「冬依が世話になりました。兄の来生春一です」
礼儀正しい、この大人でおちついた態度。
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