冬依の中学1年生

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春一は胸ポケットから名刺を出してきた。 仁依も、慌ててカバンから名刺入れを出し、自分の名刺を取り出そうとする。 そんな大人のやり取りが気に入らなかったのか、冬依が、 「彼女は黒井さん、いつも行くコンビニの人だよ」 仁依が自己紹介する前に、春一に紹介してくれようとする。 でも冬依に、春一は新月のような淡く物静かで、でも底の見えない奥深い笑みを浮かべながら、 「コンビニじゃなく、その本社の役員の人だろう。妙な略し方をするんじゃない」 と言う。 「え?」 仁依を万引きGメンだと思っているはずの冬依も驚いただろうが、張本人の仁依も驚いた。 仁依はまだ、名刺を春一に渡していない。
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