117人が本棚に入れています
本棚に追加
言葉を失う仁依に春一は、
「失礼しました」
心の中まで見通してきそうな、まっすぐな視線を向けて、
「よく気を配られた綺麗な爪をされています。普段はきっと、もっと人と接する場所、気を遣う部署で働いてらっしゃるのですね。でも誰かの補佐というより、あのコンビニの本社なら、コーポレート統括か事業サポートか……」
どうやら、会社の組織図まで、きっちり頭の中に把握しているようだ。
仁依が、
「監査指導本部です」
と言いながら名刺を交換すれば、
「ああ、あの社長直属の部署ですね。やっぱりすごく優秀な方だ」
春一は手放しの賞賛をくれた。
「……いえ、そんなでも」
イケメンに面と向かって褒められて、仁依はちょっと照れる。
ふたりの話がわからないらしく、
『なーに?』
と上目遣いで見上げる冬依には、宥めるように頭をポンポンと撫でてやりながら、春一は、
「弟が何か失礼をしませんでしたか」
仁依に改めて尋ねてきた。
最初のコメントを投稿しよう!