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仁依は、
「いいえ」
と答える。
ぶんぶんぶん、と首を振った。
すると春一の隣から、つま先立ちで仁依の名刺を覗き込んでいた冬依が、
「黒井さん、名前、仁依ちゃんって言うんだね」
砂浜で貝殻を見つけた時みたいに弾んだ声で言う。
春一が慌てて、
「冬依、失礼だぞ」
たしなめるが、
「いいじゃん。仁依ちゃん、かっわいい名前―」
冬依は言いながら、くるんと背を向けて、夜の街に向けて走り出す。
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