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なんてことだろう。
彼女は男たちの万引きを咎めるつもりらしい。
「オジョーチャン。なに寝ぼけたこと言ってんのかなー。オレらなんも知らないぜ」
「そーそー、変なこと言うと、メーヨキソンで謝ってもらわなきゃならなくなるなあ」
「謝る?」
女の子は可愛らしい声で聞き返している。
「でもこれ、まだお金払ってないでしょう」
ポンと、傘の間をすり抜けるように出てきた女の子が右手に持っているのは、酒の小瓶。
「それにオニーサンたち、そっちのカバンに、他のもいっぱい入ってるじゃない。ボク見てたんだ」
少女が顎を傾けて見やるのは、男のひとりが傘とは逆手にぶら下げているカバン。
「今ならまだ謝ればお店の人だってきっと許してくれるよ。だからボクと一緒に行こう」
『ダメだ!』
仁依は思った。
いくら彼女が善良に話しかけても、こんな男たちに通用するわけがない。
だから仁依は、男たちが広げた傘のバリケードの中に飛び込んでいく。
「ちょっとあんたたち、そこで何やってんのよっ!」
仁依が騒ぎを大きくすれば、誰かが警察を呼んでくれるだろう。
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