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「こら冬依!」
春一は冬依の背中を追いかけ、つと足を止めて、仁依を振り返り、
「すみません。じゃあ俺たちはこれで失礼します。ホントなんだかすみません」
律儀に謝ってくれる。
そのとたん、
「仁依ちゃん、まったねー!」
走っていた冬依が腕をあげて仁依を呼ぶ。
「また会おうね。またボクのこと叱ってねー」
「叱るってお前、彼女に何したんだよ」
「春兄には教えないー」
そんな風にやり取りしながら、美形兄弟は瞬く間に街の中に走り去っていく。
あっという間に見えなくなった。
ふたりの背中を呆然と見送りながら仁依は、
「……かっわいい冬依くん。私がお兄さんとばっかり話したから、あれきっと、ヤキモチ妬いちゃったんだ」
おかしくておかしくて、またひとしきり笑い転げた。
了
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