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プロローグ
私が目を開けると、目の前に、これまでお目にかかったことがないような、超絶イケメンが心配そうにこちらを見ていた。
「ああ良かった。気づいたか」
イケメンは、薄茶の髪に茶色の瞳。
一見しただけでハーフだとわかる彫りの深い顔立ち。
またその容姿にふさわしい、耳に響くいい声でささやく。
「ただ歩いていただけなのに、すっ転んで気絶するだなんて、まったくお前は、器用にもほどがあるな。
だから日頃から気をつけて歩けと言ってあったはずだが」
俺の忠告をちゃんと聞かないせいだとか、何とか……、
イケメンのクセに口うるさく言いながら、どうやら私の額に乗っけてあったタオルを外して、代わりに手のひらでやさしく頭を撫でる。
イケメンさんの冷たい手のひらも気持ちいいし、好きに言わせておいても、彼の声は耳に心地よいのだけれど。
私は思わず、言ってしまった。
「親切はありがたいんだけど、少しうざったい。
っていうか、あなた誰?」
超絶イケメンは、しょうゆを入れたコーヒーを飲んだような顔をした。
「……美百合?」
恐る恐るといった調子で私に問う。
そこでハタと気が付いた。
「えと? 美百合って誰? っていうか私って誰?」
ドラマで聞くみたいなセリフを、本当に自分が言う日が来るだなんて、誰が想像できるだろう。
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