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その時、私はその場に佇んでいた。
周辺の地面には電柱や鉄筋コンクリートの破片が突き刺さり、猛々しく炎が燃え盛っている。
その炎の一部が私たちを取り囲み、まるで私たちを守ってくれるかのようだった。
「くそっ……どうなってんだ!」
私の隣に並ぶ少年が我鳴る。
私の同い年のその男の子は、横に突き刺さっている電柱に足蹴りをくらわしていた。
「親父たち……いつもは喧嘩してばっかりのくせに、こういうときだけ手を組みやがって!」
こんどは握り拳を電柱にぶつける。
しかしその声は当人に届くことは無く、遥か遠くから彼らの攻防の音色だけが寂しく響くだけ。
鋼が打ち合う音、空中を直線状に突き進む炎の音だけが私たちを包み込む。
「俺たちはいつも見てるだけ……くそっ!」
少年は、今度は地面に拳をぶつける。その際に拳の周囲に火が生まれるが、その火は一瞬のうちに散ってしまった。
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