Prologue 01

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 人型のそれは、一歩、また一歩と私たちに近づく。  その右手に収められているものは丸い、球状の何か。  わずかに凹凸があるようだが、逆光による影が強すぎて判別が出来ない。 「親父……? 親父!」  少年の叫ぶ声に反応したのか、人型は私たちに指を向ける。  口が動くのは見て取れたが、何を喋ったのかはわからなかった。  その一言を言い終えると同時に、私と少年の間に一陣の光が駆け抜ける。  しかしその光は、白でも黄色でもなく紫に近い青だった。  音も無く駆け抜けたそれは、私たちのはるか後方で爆音を奏でる。 「空間支配系……?」 そうつぶやいた少年は、一歩後ろに足を引く。 「やめて」  誰の声だ? 私の声か? 自分の声とは思えないほど、自分の声帯が動いている感じはしない。  しかし人型はその声を無視しているのか聞こえていないのか、確実に一歩ずつ私たちに近づく。 「やめて」  少しずつだが、自分の声が大きくなっていくのが感じ取れる。しかし無意識だ。自分の声は自分の心にすら届かない。
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