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「藍……?」
私を見下ろす少年が呟く。
「やめて」
やがて私の声は、人型を立ち止まらせるだけでなく後退させるほど強く、大きな声となっていた。
人型が焦る様に、私に目掛けて指を向ける。
人型の一言、光る指先、放たれる紫の光。
しかし、私に直撃する手前でその光は失われた。
まるで、見えない鏡に吸収されたかのように。
◆
その時、俺は藍に何が起きているのかを理解できなかった。
俺はまだ自分の力を制御できないため、あの時に人型に反撃していたら、自分すら、藍すらも巻き添えにしていたかもしれなかった。
でも藍は反撃し、そして人型に勝った。
しかしその時の俺は、藍のその力がやがて藍を導く存在だということを知らなかった。
いっそ、今でも知らない方が良よかったのかもしれない。
その方が、藍も俺も、今頃幸せに暮らしていたのかもしれない。
あの力の代償が何なのか、いずれ俺は藍に伝えなければならない。
俺が藍の、藍が俺の、唯一の存在であるために。
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