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いつもなら、
龍一にこぼれんばかりの笑顔を向けるか、
物も言わず抱きついてくる美百合なのに、
今日は、じっとその場に立ちつくしていた。
顔も俯き加減で、長い黒髪が邪魔をして、表情が見えない。
さては、龍一の仔猫の扱い方が気にいらないのかと、ミャーの体を抱き直そうとすると、
「フーッ!」
ミャーが威嚇の声をあげた。
龍一の腕に小さな爪をたてて、目の前にいる美百合を睨んでいる。
龍一が怪訝に思って、背の低い美百合の顔を覗きこむために、腰をかがめると、
――ふいに美百合が顔をあげた。
その表情は、美百合のものではなかった。
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