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いや、つくりは美百合の顔だ。
唇をあげ、目尻を下げている。
笑っていると言えばいいのだろう。
だが、龍一に伝わる印象が、ひどくおぞましい。
こんな表情をする美百合など、これまで龍一は見たことが無かった。
龍一は、えも言われぬ不快を感じて、とっさにミャーと共に飛び退った。
その瞬間、さっきまで龍一がいた場所を、円を描いて包丁が横切る。
美百合が、龍一に切りつけて来たのだ。
「……美百合、何をする?」
美百合は、不思議そうに手ごたえのなかった虚空を見つめ、視線をさまよわせ、
そして、龍一を見つけた。
「美百合?」
美百合は変わらず笑っている。
しかし、それは断じて、いつもの美百合の笑顔ではなく、
「ウウウゥゥゥ」
ミャーは、ずっと唸り続けている。
そして、
「フーッ!」
毛を逆立てた瞬間、美百合が来た。
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