2 父

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そして龍一は、思い出した。 美百合が発した、男の笑い声。 あのおぞましい声は、かつての同僚、龍一への復讐を叫んだ葛原の声だ。 その時、寝室の中で、 ガタン! と物音がした。 龍一は蹴り飛ばす勢いで、ドアを開ける。 眠っていたはずの美百合が、ベッドの脇に立っていた。 ミャーも床に降りて、 「グウゥゥゥ」 美百合に向かって唸っている。 「葛原っ!」 龍一は、美百合の姿をしたモノに向かって叫んでいた。 美百合は、男の声で、 「人ではないお前でも、自分のことになると慌てるのか?」 と言った。
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