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風のように駆け寄り、美百合を強く抱きしめる。
その瞬間に来た。
頬に焼け火箸をあてられたような刺激が走り、熱い液体が涙のように伝う。
美百合のハサミは、龍一の眼球を狙った。
だが間一髪、龍一は顔を傾けて避ける。
「キャアアアア!」
自分が何をしたのかを知り、美百合は叫んだ。
「ダメ、龍一、私から離れ、
――ああっ!」
精一杯の訴えを、理不尽な暴力で断ち切られたように、背を反らして悲鳴をあげる。
美百合の体は、何者かに、キリキリと締め上げられているようだ。
「よせ葛原! 美百合を傷つけるな!」
龍一は美百合が倒れてしまわないように支えながら、美百合の中に潜むソレに語りかける。
そんな無力な方法しか、龍一にはすべがない。
「よせ! 苦しめるなら、俺にしろ。俺に来い!」
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