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ショックで、美百合がこのまま気を失ってくれたらいい、と思った。
美百合が意識を無くせば、葛原は美百合のすべてを乗っ取って、計画通り龍一を殺すのだろう。
だが、
『それでいい』
すべては、自分が蒔いた種だ。
美百合には何の罪もない。
美百合の知らないところで、すべてを終わらせて、
一刻も早く、美百合を襲うこの苦しみから、救ってやりたかった。
しかし、これも葛原の復讐なのか、
それとも美百合の意思の強さなのか、
美百合は、滂沱の涙を流しながらも、龍一を見つめている。
動き続ける唇は、龍一の名前と、
『逃げて』
を交互に繰り返している。
そのせいなのか、葛原の声は、今は聞こえなくなった。
美百合も、葛原と戦っているのだ。
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