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龍一は、ぐったりとした美百合の首筋に指を触れ、
弱まってはいるが、確かに脈打っているのを確認する。
意識は失っているが、美百合は生きている。
しかし、何がどうなっているのか、さっぱりわからない。
ミャーが美百合に何をして、
どうして外へ飛びだしていったのか、
葛原はどうなったのか。
何ひとつ、解決したとは考えられない。
龍一はベッドから布団を引き下ろし、美百合の体を包んだ。
自分もすばやく立ちあがり、手近なシャツを羽織ると、ミャーの後を追った。
右手には、愛用のベレッタ。
ミャーの黒い尻尾を追って、駆けに駆ける。
細くてしなやかな尻尾は、まるで龍一を誘うように、視界の隅に消えていく。
イチゴハウスの角を回って、
小さな菜園の畔をくだり、
裏山へと登る小道に、
小さく駆け登るミャーの後ろ姿を見つけた。
時刻は夕闇が迫った、逢う魔が時。
仔猫の痕跡は、もしかしたら罠へと誘う道しるべなのかもしれない。
けれども龍一は、追いかけずにはいられなかった。
ミャーは美百合のことを何と呼んだ?
『オカアサン!?』
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