3 母

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朦朧とした意識の下で、目の前に立っているはずの獣の姿が、モヤモヤと揺らめき、白い人間のシルエットとなった。 そいつは口を開く。 「ミャーの愛嬌はワナだよ。みんな騙されたね」 龍一は、落ちそうになる瞼を、無理やりこじ開ける。 薬でも盛られたように体が重いが、いま倒れれば、龍一を待ちうけるのは『死』だ。 白い影は言った。 「ボクはおまえたちの敵だよ。やっと決着だ」 白い影は誘うように揺らめく。 今撃たなければ、来る! 龍一の鍛えられた体が、何も考えずとも、反射で動くはずの体が、ベレッタの銃口をあげた。 だがしかし、心がそれを押さえこむ。 ベレッタの引き金に指をかけるが、愛銃が引っ掻いたギターのような悲鳴をあげ、頭の芯が痺れた。 龍一の心と体が相反する。 『これは何だ!』 心と体がバラバラにされるような音の奔流に、思わず耳を押さえた。
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