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朦朧とした意識の下で、目の前に立っているはずの獣の姿が、モヤモヤと揺らめき、白い人間のシルエットとなった。
そいつは口を開く。
「ミャーの愛嬌はワナだよ。みんな騙されたね」
龍一は、落ちそうになる瞼を、無理やりこじ開ける。
薬でも盛られたように体が重いが、いま倒れれば、龍一を待ちうけるのは『死』だ。
白い影は言った。
「ボクはおまえたちの敵だよ。やっと決着だ」
白い影は誘うように揺らめく。
今撃たなければ、来る!
龍一の鍛えられた体が、何も考えずとも、反射で動くはずの体が、ベレッタの銃口をあげた。
だがしかし、心がそれを押さえこむ。
ベレッタの引き金に指をかけるが、愛銃が引っ掻いたギターのような悲鳴をあげ、頭の芯が痺れた。
龍一の心と体が相反する。
『これは何だ!』
心と体がバラバラにされるような音の奔流に、思わず耳を押さえた。
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