3 母

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この意味不明の愛銃の叫びと、胸の声が、 龍一の判断を妨げる。 いつもなら考える間もなく動いている龍一の体が、金縛りにあったように動かない。 「ギャアアゥゥゥ!」 白い影が、獣の声をあげた。 殺らなければ、殺られる! 龍一の喉笛を喰いちぎるために飛びかかってくる。 龍一の生存本能はキンキンと警報をならし、身を守るための行動に移れと叫んでいる。 龍一は自分の身を守るために、心を閉じた。 何も考えず、ただ目的を遂行するための機械となった。 それはかつて、暗殺時や敵に拷問を行う時、龍一が入れたスイッチだ。 引退すれば、二度と使うことはないと思っていたが、 それを入れれば、龍一の中の回路が切り代わり、体の指令に従って、ベレッタが動く。 何千回、何万回と繰り返した、射撃の行程。 正確に無慈悲に、白い影の中心に的を絞って、引き金をひく――。 がその時、 「――龍一ぃ!」 胸の中に直接響く、美百合の叫びと、 「……オカーサン!?」 白い影の不安そうな声を聞いた。 頬をはられるようなショックに頭が揺れ、 龍一が放った弾丸は、白い影の脇をすり抜けた。 「……俺が、はずした?」 信じられない事実に、龍一は息を飲む。 敵は目の前に立っている。 この距離で、龍一が狙った的をはずすわけがなかった。
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