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だが今や白い影は、モヤモヤとした輪郭がはっきりし、ひとりの子どもの姿を形作っている。
黒い髪だが、色素が薄い透明な肌と茶色の瞳をした、10歳ぐらいの美しい少年。
「……負けちゃった」
生意気に肩をすくめてみせる仕草は、弟の皆人の小さい頃にそっくりだ。
これが葛原のわけがない。
だが子どもは、
「葛原ってやつは、ボクの中にいるよ」
龍一の心を読んだように、そう言った。
そして体を仰け反らせて、ビクンと跳ねた。
さっきまで確かに見えた少年の姿が、今度は薄ぼんやりと消えていく。
「おい!」
意味もわからず龍一は手をのばした。
それに縋るように、子どもは龍一に顔を向ける。
少しだけ、輪郭が復活したような気がした。
子どもは龍一に向かって命ずる。
「あいつが逃げ出す前に、ボクごと撃つんだ……」
「っ、バカな!」
龍一は声を荒げた。
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