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龍一は唇の端をあげ笑い、掛け布団を右腕でめくって、誘った。
「おいで」
美百合は、とたんに赤面する。
「な、なによ。病人がそんなことして、いいと思ってるの?」
龍一は堪えきれず、クックッと笑った。
「ご要望にお応えしてもいいんだが、さすがに今はキツい。汗をかいたら、少し寒いんだ。ここへ来て温めてくれ」
美百合は、もう一段階、真っ赤になった。
腹を抱えて笑いたいところだが、あまりいじめると臍を曲げるので、唇を噛んで堪える。
体の脇で両拳を握り、プルプル震えている美百合に、助け舟を出してやった。
「風邪やインフルエンザじゃない。うつることはない」
美百合は、
「……うつってもいいのに」
訳のわからないことを愚痴りながら、もぞもぞと龍一の隣に潜りこんできた。
龍一の胸に、張り付くようにピタリと寄り添う。
「フフッ。汗臭い」
意地の悪いセリフは、からかった龍一への仕返しだろう。
龍一は微笑んで、美百合の肩を掴んで引き剥がし、代わりに自分が、美百合のふくよかな胸に顔をうずめた。
クンクンと鼻をならして、
「お前こそ汗臭いぞ」
冗談めかして言ってやる。
美百合は、龍一の頭をギュッと抱き、
「ヤ、龍一。くすぐったいよ。イヤ」
「何がイヤだって?」
顔を埋めたまま囁いてやると、美百合はますますくすぐったがって、ジタバタと暴れた。
龍一は、上機嫌の美百合に静かに尋ねる。
「また、いつもの裏山か?」
美百合は暴れるのをやめて、コクンとひとつ頷いた。
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