1 猫

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美百合は、ひとりで裏山に登ることを日課にしていた。 「ダイエット」 と美百合は笑うが、20分ほどで登ってしまえる小さな山では、さほどの運動にはならないだろう。 だけど、小山の拓けた頂上に立てば、眼下に龍一たちの住む一軒家を見下ろすことが出来る。 盛夏の夕暮れにかけて登れば、 家に灯る明かりや、その向こうまでずっと続く長閑な田園風景は、 そこに立つ者の心を慰めてくれる。 気持ちのいい場所だが、美百合は、龍一をけしてその場所には誘わない。 時間を見つけてはひとりで登って、かなりの長い時間を過ごしてくる。 小さな裏山の頂上でたったひとり、何事かを思い耽っている。 あまりに長い時間、帰ってこないと、さすがの龍一も心配になるのだが、それでも美百合の時間を邪魔することはしない。 けれど、美百合のために小さなベンチをしつらえ、山肌を縫う小道の整備を欠かしたことはなかった。
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