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美百合には何の計算も、企みもない。
呼吸を乱し始めた美百合を見ながら思う。
もしかしたら、美百合の隣でなら、いつか熟睡できる日がくるのかもしれない。
だけど、
「誰だ!」
龍一は語気荒く怒鳴って、ベッドの裏に隠してあったベレッタを、すばやく戸口に向けた。
こうやって、いつどこから、刺客が襲ってくるかわからない。
龍一の周りは、未だゆっくりと眠れる環境にないのだ。
今夜の龍一は、熱のせいか、感覚が鈍っている。
これまで、寝室などというプライベートな場所にまで、侵入者を許したことはない。
しかし、確かに部屋の隅に感じた何者かの気配は、銃口を向けたとたん、暗い霧のように霧散した。
目を向けても、そこには誰もいない。
「……龍一?」
しばらく待っても何も起こらない様子に、美百合は転がり落とされたベッドの向こうからおずおずと顔を出してきた。
龍一は、はたして自分の勘違いだったのかと、深く息をはく。
熱のせいで、少し神経質になっているのかもしれない。
ベレッタを持った腕を、力尽きたようにパタリと落とした。
その瞬間、
「……オト……サン……」
はね起きるように顔をあげたが、やはり誰の姿も無かった。
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