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龍一の熱は、一夜にして綺麗に下がった。
しかし美百合は、たゆまなく次の問題を連れてくる。
どこからか、仔猫を拾ってきたのだ。
体のほとんどが黒だが、鼻の上から口の辺りだけが白い、まるで仮面を被ったような顔をしている。
尻尾も真っ黒な、なかなかのハンサム。
美百合のたっぷりとした胸の中に半分埋もれるようにして、両腕に強く抱きかかえられていた。
相手は猫だが、龍一はたちまちムッとした。
「ダメだ。元いたところに返して来い」
しかし美百合は、ぶんぶんと首を振る。
「イヤっ! この子は絶対に飼うのっ」
「ダメだ」
これまでも何度も何度も、何度も、美百合は動物を拾ってきた。
それは猫であったり犬であったり、ウサゴンだったり。
そのたびに、反対する龍一と、大げんかになるのだが、
「この子は飼うのっ!」
美百合はその大きな瞳から、ボロボロと涙をこぼし始めた。
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