1 猫

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龍一の熱は、一夜にして綺麗に下がった。 しかし美百合は、たゆまなく次の問題を連れてくる。 どこからか、仔猫を拾ってきたのだ。 体のほとんどが黒だが、鼻の上から口の辺りだけが白い、まるで仮面を被ったような顔をしている。 尻尾も真っ黒な、なかなかのハンサム。 美百合のたっぷりとした胸の中に半分埋もれるようにして、両腕に強く抱きかかえられていた。 相手は猫だが、龍一はたちまちムッとした。 「ダメだ。元いたところに返して来い」 しかし美百合は、ぶんぶんと首を振る。 「イヤっ! この子は絶対に飼うのっ」 「ダメだ」 これまでも何度も何度も、何度も、美百合は動物を拾ってきた。 それは猫であったり犬であったり、ウサゴンだったり。 そのたびに、反対する龍一と、大げんかになるのだが、 「この子は飼うのっ!」 美百合はその大きな瞳から、ボロボロと涙をこぼし始めた。
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