家庭菜園

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家庭菜園

 結婚して家を出ている姉から、自宅宛に野菜が届いた。  母が電話で聞いたところ、総て家庭菜園で作った作物らしい。  姉夫婦は結婚後、暫く安アパートで暮らしていたのだが、二年前にローンでマイホームを購入した。  お祝いに訪ねた時、予想以上に庭の広い家が手に入ったから、この敷地ならそこそこの家庭菜園ができると喜んでいたっけ。  その言葉通り、何種類もの野菜を植え、丹精込めて育て収穫したらしい。  母親は普通に喜んでいたけれど俺は複雑だ。  実は、姉夫婦が住んでいる辺りに親戚のいる友人がいるんだけれど、そいつ情報によると、どうも姉の家が建てられたその土地は、元々共同墓地だったらしい。  もちろん、どこかの建築会社が合法な手続きの元に土地を買い取り、きちんと整備して建売住宅を拵えた訳だから、問題は何一つないんだろうけれど、さすがにそういう土地で育てられた作物を口にするのはなぁ。  偏見で悪いけれど、送られてきた野菜をどうしても俺は食う気になれなかった。  だから何かと理由をつけ、届けられた野菜が終わるまで、家での食事を回避していた。  外食やコンビニ弁当などの利用は、連日続くと懐に痛いが、しょせんは家庭菜園で収穫している野菜だ。姉の家の分もあるから、送られてきた量はたいしたものじゃない。  ほんの数日の我慢。そのつもりでいた。だけど…。  半月も経たぬうちに、また、姉の所から野菜が届いた。ちなみに種類のラインナップは前と一緒。いくら旬の野菜だとしても、あの面積の畑からこうまでの収穫がある筈がない。  そこのところをそれとなく母に伝え、お礼の電話口で姉に問うてもらったのだが、返った言葉はなんと、 『庭の畑、作物の育ちが物凄くいいの。何を植えても収穫の三日後くらいにはまた次の実が生って、一週間くらいで再度収穫できるのよねー。食費が助かって、家庭菜園様々だわー』  何だよその畑。あからさまに怪しすぎるだろ。食費云々で浮かれてないで、土地がおかしいって少しは思えよ。  そう言いたいくらいだったけど、対応する母も『それはいいわね』とかやってるし…。  こだわる俺がおかしいのか? 多分、そんなことないよな?  とりあえず、家メシ拒絶は財布の中身がもたないので、この先は、元々あまり好まなかった野菜を、さらに嫌う偏食体質に拍車がかかった。この路線でいこうと思っている。 家庭菜園…完
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