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5日前のことだ。南のクラスの女子生徒、中村やすほが自宅で自殺をした。原因は度重なるいじめであったのだが、そのいじめに気付いたものはいなかった。いや少なくとも南は気づかなかった。
確かに自殺をする当日の中村は、様子が少しおかしかったが「塾の宿題をやってないのをさっき気づいたので」という言葉を南は完全に信用してしまった。
いやもしかしたら面倒なことに関わりたくない、とどこかで思っていて、無理やり信じてしまったのかもしれないな、とも南は思っていた。もはやその時のことは誰にもわからなくなっていた。
いじめの現場はそのほとんどがトイレだったと、遺書にそう書かれていた。ただし加害者の名前はどこにも記されていなかった。
古典的ないじめだな、と南は思う。21世紀になっても、大して変わらない。トイレの個室に閉じ込められ上から水をかける、便器を舐めさせるなど、胸糞悪いことが連なって遺書に書かれていた。
遺書には自殺当日のことも書かれていた。便器に頭を押し込まれ、全部飲め、と言われたことも記されている一方、初めていじめ以外のことが書かれていた。
その日は誰か別の人間が来たらしい、とのことだ。便器に押し込まれていたので良くわからないが、「何見てんだよ」と叫んでいたので違いないと。
5日後、ようやく南はその目撃者を見つけることができたのだ
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