1人が本棚に入れています
本棚に追加
「え?なんですか急に?」
突然のことに立花由里子は驚き、戸惑った。
ずっと探してたんだよ君を、と言われれば尚更だった。どこかでそんなセリフを口に出す人は現れないかしら、と立花は何馬鹿なことをと思いながらも願っていたのだから仕方ない。
運命、という言葉が頭をよぎる。立花にとって実に甘い言葉だった。
南は遺書を読んでから毎日、仕事が終わるといじめがあったと思われる時間・場所に来ていた。俺にできることはもうこれくらいしかないと、いつかいじめの目撃者に会えることを信じていた。
もちろん、いじめの調査は行ったが、加害者も目撃者も、誰も名乗り出なかった。自分のクラスに裏切られたと感じ、また自分自身の情けなさに、南は嘆いた。そして南にはこうするしか残された手はなかった。
そして彼女に会えた。信じる者は救われる、と南は一瞬思ったが、すぐにかき消した。誰も救われていないじゃないか、と。
最初のコメントを投稿しよう!