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「君は・・・立花由里子さんかい?」
南はもしやと思い、聞いてみた。目の前の女子高生の姿に見覚えがあったからだ。
「え、は、はい。でもどうして」
立花はまた驚いた。名前を知っていることもそうだったが、あだ名で呼ばれなかったのは久しぶりだからだ。自分の名前に慣れてないなんて変なの、と思い立花は自身を少し笑った。
「・・・なんで私を探していたのですか?」私をこのままさらっていくためですか、と立花は妄想する。
「いじめの現場を見ていないだろうか。誰かがいじめの最中に来たと記されていたんだ。君、いや由里子さんは知らないかな?」
南は必死だった。これで分からなければ、いじめは迷宮入りになる。
「・・・こって呼んでください」
立花は頬を赤らめ、下を向きながらお願いした。
ふいに名前を呼ばれた立花は、もう一度、いや”さん”なんて付けないで呼んでほしい、と欲を持つ。南からの質問のことはすっかり頭にはない。
「えっと・・・ゆ、由里子?」
突然の申し出に南は戸惑いながらも応える。そのあとで、何馬鹿なことをしているんだと、南は自分に言い聞かした。こんなことをするために、こんな所にいるわけではない。
が、良くみたら目の前の女性がとても可愛らしいことに気付いてしまう。本人は気付いていないが、南はもじもじしている女性にとても弱かった。
「ゆ由里子、いじめをここで見たか?」
照れている自分に気付き、これじゃあ亡くなった山本に呪われるかもしれないな、と南はふと思った。
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